糖尿病は、高血圧とともに、日本人に多い病気の代表で、現在、患者数は800万人(※ 2013年現在950万人)にも上ると推定され、国民病とまで言われています。

糖尿病は、主に膵臓で作られるインスリンというホルモンが不足して、血液中のブドウ糖の濃度が異常に高くなる病気です。その血糖の濃度が高いと、尿に混じって糖が排出されるため、糖尿病と呼ばれています。この病気自体には、激痛などの症状はありませんが、放置しておくと、異常に濃い血糖値のために血管の細い部分に障害が起こり、体のあちこちに深刻な合併症が現れてきます。糖尿病には様々なタイプがありますが、大きく分けると、インスリン依存型糖尿病、インスリン非依存型、その他の糖尿病の三グループに分かれます。

 インスリン依存型糖尿病は、日本ではごく少数ですが、主に10歳以下の子供に現れる病気です。大人に多い非依存型糖尿病とは異なり、食べ過ぎや運動不足とは関係なく、突然発病するのが特徴です。このタイプの糖尿病は、伝染病(感染症)の病原体のウイルスに、インスリンを生産する膵臓の細胞(ランゲルハンス島β細胞)が壊された場合などに起こります。自前のインスリンが作れなくなるわけで、注射でそれを補給する必要があるために、インスリン依存型と呼ばれているわけです。

インスリン依存型糖尿病は、膵臓のβ細胞が壊され、インスリンの生産が止まるとすぐに発病し、血糖の濃度の上昇、のどの渇き、頻尿、脱力感などの症状が現れます。ただしウイルスに感染した全員がこの糖尿病になるわけではなく、ウイルスの影響を強く受けやすい、遺伝的な体質の子供が選択的に発病します。このタイプの糖尿病は、放置しておくと急速に悪化し、脱水症状、昏睡、死亡へと進むこともあるので、早期治療が大事です。

もう一つのインスリン非依存型糖尿病は、男女含めて40歳以上の人に多い病気です。

日本の糖尿病患者の大多数がこのタイプで、インスリンを十分に生産出来ない遺伝的な体質の人に、ストレスや、食べ過ぎ、飲み過ぎ、肥満、妊娠などの要因が重なった場合に発病します。このインスリン非依存型糖尿病も、のどの渇き、頻尿、体重の減少などの症状が出ますが、そうした症状は、血糖の濃度が高い状態が、慢性的に長く続かないと現れないのが普通です。そのため、定期的な健康診断を怠っている場合などは発見が遅れ、重大な合併症を引き起こす可能性があります。糖尿病の合併症は、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害などが代表的です。

糖尿病性腎症は、糖尿病の合併症のなかでも特に危険な病気で、血糖の濃度の高い状態が10年以上続き、腎臓の機能が低下した場合に発病します。初めのうち、目立った自覚症状はありませんが、放置しておくと、むくみや尿の減少などが現れ、やがて尿毒症になって、人工透析をしないと生きられないほどに悪化します。

糖尿病性網膜症も、血糖の濃度の高い状態が10年以上続いた場合に起きることが多く、眼底の細い血管が破れて出血する病気です。

最初は眼底の血管に微小な瘤ができ、その段階では自覚症状はありませんが、放置しておくとそこが破れて出血します。出血は、網膜に悪影響を与えるため、視覚に障害が起こり、最悪の場合は失明してしまいます。

糖尿病性神経障害は、腎症や網膜症より早い時期に、神経が侵されて起こります。最初は手足のしびれ程度の症状から始まりますが、放置しておくと、やがて、熱いものに触れても気づかないほど感覚が鈍くなったり、神経痛が起こったりします。感覚が鈍くなった場合は、火傷や傷を負いやすくなり、傷口から菌が入って壊疽になることも珍しくありません。糖尿病には、そのほか膵臓の病気、ホルモンの異常、薬物などが原因のタイプがありますが、非依存型糖尿病よりはるかに少数です。