高血圧は別名「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれています。放置しておくと、脳梗塞や心臓衰弱、尿毒症などの危険な合併症を誘発することがあり、しかも、そうした合併症が目立たず静かに進行して、突然発症する場合がある怖い病気です。
高血圧には、大きく分けて本態性高血圧と二次性高血圧の二つのタイプがあります。
本態性高血圧は、老化、動服硬化、肥満など、原因の可能性が複数あって、一つに特定できないタイプの高血圧です。
二次性高血圧は、原因が明らかな高血圧ですが、その原因には多くの種類があります。
体の部分別に見ると、頭や首の部分では脳や甲状腺の病気、おなかでは副腎や腎臓系の病気、それから、神経系の病気などが二次性高血圧の原因になります。
つまり、頭や首の部分では脳腫瘍、脳内出血、くも膜下出血、甲状腺機能亢進症、そしておなかの部分は、副腎では、クッシング症候群(副腎皮質ステロイドホルモン過剩症)や原発性アルドステロン症(副腎髄質ホルモン過剰症)、腎臓系では、腎臓病や腎臓の血管障害、更に、神経系では、交感神経系(自律神経の一つ)の病気などが高血圧を起こします。脳腫瘍の場合は、頭蓋の中の圧力が高まり、高血圧になります。頭蓋内の圧力の上昇が全身的な高血圧を招く理由は複数ありますが、要約すると「頭蓋内の圧力が高くなると血液が流入しにくくなり、脳が血液不足気味になる。そこで、脳の血流を確保するために、体が全身の血圧を高くする反応を起こす」ということです。
脳内出血の場合も、頭蓋内の圧力が高くなり、血圧が一気に上昇します。例えば、日ごろ170/90mmHgだった血圧が、急に220/130mmHgなどの高血圧になります。
出血で脳細胞がダメージを受けるため、高血圧と同時に、大概は激しい頭痛や半身のマヒなどが現れます。
くも膜下出血は、出血が少量のこともある病気です。その場合には脳細胞のダメージも少なく、高血圧と頭痛だけでマヒは現れません。
甲状腺機能亢進症はバセドー病とも言われています。甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、高血圧とともに、手の震え、異常な発汗、目の突出などの症状が現れます。
副腎の病気のうち、クッシング症候群は、副腎皮質の過形成(大きくなる現象)や腫瘍のために起こる症候群で、副腎皮質ステロイドホルモンが過剰に分泌され、高血圧を引き起こします。この症候群が糖尿病の原因になることもあります。
もう一つの副腎の病気、原発性アルドステロン症は、副腎髄質の過形成や腫瘍のために発症し、アルドステロンという副腎髓質ホルモンが過剰に分泌されるため、高血圧になります。そして腎臓系の病気では、慢性糸球体腎炎、慢性腎不全などの腎臓病や腎血管の狭窄が高血圧を引き起こします。慢性糸球体や慢性腎不全は、血液の濾過や血液中の水分調節などの腎臓の機能が低下するため、高血圧になるものです。こうした二次性高血圧の中でも最も多く、特に、腎実質性高血圧と呼ばれています。
また腎血管に狭窄が起きた場合は、腎臓に循環する血液が減るため、腎臓は体全体が血液不足になったと感じ、血圧を上げるホルモンのアルドステロンを必要以上に分泌してしまうため、高血圧を招きます。このタイプは腎血管性高血圧と呼ばれています。
交感神経系の病気では、交感神経の自律神経の部分に腫瘍が出来た場合などに、高血圧が起こります。そこに腫瘍が出来ると、神経の末端から、カテコラミンという血圧を上げるホルモンが過剰に出されるためです。