甲状腺はのどの辺りに在る、蝶が羽を広げたような形の小さな器官で、ここから分泌されるT3(トリヨードサイロニン)、T4(サイロキシン)というホルモンは、全身の組織の酸素消費量を高め、新陳代謝を活発にします。T3は、T4より強力な働きをします。
また、脳の下面の脳下垂体は、TSH (甲状腺刺激ホルモン)を分泌してT3やT4の分泌を増やす働きをします。他方、T3やは脳下垂体に働いてTSHの分泌を抑えます。
このように、甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンは互いにアクセルとブレーキの役目をしながら、新陳代謝の量を正常範囲に納めているのです。甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)でほ、T4とT3の血中濃度がともに上昇し、TSHの分泌は抑えられて低下します。甲状腺機能低下症(粘液水腫など)では逆にT3とT4がともに低下し、TSHが上昇します。
T3とT4の間には、甲状腺から分泌されたT4が血液中に運ばれ、全身の末梢組織でT3変換されるという関係があります。T3は甲状腺から分泌されるよりもこうしてT4に変換されるもののほうが多く、血中T3の約80%を占めています。このため、ガンや肝硬変、重症の糖尿病、栄養障害などで、末梢組織でのT3への変換が低下すると、血中T3が下降して、見かけ上、甲状腺機能が低下しているように見えます。
T3とT4の99%以上はいわば予備軍で、タンパク質と結合して活性を持たず、実際にホルモンとして働くのは、残る微量のFT3とFT4です。
そこで、最近ではFT3(遊離T3 )とFT4(遊離T4 )の血中濃度も同時に測定され、甲状腺の異常の早期発見に役立てられています。
甲状腺機能亢進症は、このうちFT4より強力な活性を持つFT3の上昇をマ—クすることで早期発見できます。甲状腺機能低下症では、FT4とTSHが早期発見のマーカーと して重視されます。
- FT3が高い場合はバセドウ病など。