人が毎日、元気に過ごすためには、頭がよく働き、心臓がリズミカルに打ち、肺や胃腸が順調で、酸素や食べ物を取り込む等と、常に脳神経や胸腹部内蔵の働きを主に考えますが、体の奥深く静かに体を支えているには特別な気配りなしに居るのではないか?
確かに骨は硬いだけで、鼓動を発するわけでもなく、眠気・咳・食欲不振にも関わりなく見え、症状や毎日の中で変化を現わしません。普段、気に掛けていません。
骨は確かに、鈍い「臓器」ですが、実は、脳や心臓のような重要な臉器に対する保護作用と背中や手足の奥での支持作用に、全身の血液へカルシウムを供給するための貯蔵機能を持ち、人間が生命維持して働くためには必須のものなのです。このように緣の下の力持ち的働きをしているため、つい忘れがち存在です。
しかし、長寿社会を迎え、量より質の生活を求める考えが強くなって来ている現在では、関心を持たなぐてはならない疾患として骨の健康状態が問われています。多くの高齢者骨折は、高齢者の生活の質を低下させています。骨は日常に遭遇する外力の数倍もの強度を持っているので、不都合な食事や運動不足といった生活習憤が継続しても、容易に骨折を起こす状態にまで至りません。しかし、とくに女性の場合は閉経後30年たち80歳頃まで食事摂取吸収量不足や運動不足が続くと、骨のカルシウム量が次第に減少し、骨折せずに居られる限界を越えてしまい、骨が脆弱になります。男性でも高齢になると、食事摂取・吸収量不足や運動不足に加えて、男性ホルモンの減少により筋肉が衰え、骨が脆弱になります。高齢期に出会う骨折に、関心と対策を考えねばなりません。腦卒中とともに骨折は、高齢者を寝たきり状態にさせる原因疾患でもあります。命の長さとともに質の高い生活で余命を送らなければ意味がありません。高齢社会になって、やっと認知され始めた骨への健康度は、若い人にとっても、生活行動力の基盤力でもあります。