人間の骨は折れた場合、やがては骨は繋がります。繁がりにくいことも、繁がらないこともあるものの、折れた部位で繋がろうとする作用が始まり、多くの場合は自分で骨折を治してしまいます。これは骨が生きている証拠なのです。骨折とは、外力によって骨の構造の連続性が絶たれた状態で、骨盤にヒビが入った、頭の骨が陥没した、背骨がぐしゃとつぶれた、なども骨折のタイプの一つです。これらの骨折の中でも骨癒合の経過がわかりやすい、長管骨の骨折についていいますと、先ず骨組織に断裂が生じると、骨の中を走っている細い血管がちぎれて出血する。体の色々な組織の中には、関節の軟骨や眼の水晶体・ガラス体のように血管がほとんど通っていない部位もあるが、骨には血管がたくさん走っており、どの部位でもまたどのようにわずかな部分が壊れても、血管が切れ、周囲を血液びたしにしてしまいます。このようにして骨折部位を中心にして出た血液は、数時間もたてば固まりだして血腫となり、やがて赤黒い水ようかんのような形態になる。
その後、骨折部の周囲は外力や圧迫による影響のために血管が太くなり浮腫を生じるが、これは強く打撲した部位が腫れて赤みをもつのと同じ原理です。これを外傷性炎症と言います。炎症の生じた部位からは、血液中を泳いでいる何種類もの細胞に、集まるようにとの号令が出されるが、それは炎症周囲の組織にのみ命令がおよぶ何種類かの局所ホルモンによってなされます。その結果炎症の部位で余計な物質を溶かして貧食するマクロファージや、細菌などの外敵を取り締まるリンパ球などが集まるが、集まりすぎると火事場の野次馬のように、かえって迷惑をこうむることにもなります。例えば集まり過ぎたために局所が腫れて激痛が生じたり、血管を詰まらせたりすることもあり、また種々な部位でアレルギー症伏が出現したりするのもこれら野次馬によるものです。