肺癌などの悪性腫瘍が骨に転移した場合、転移した骨ではガン細胞が増殖し、骨が破壊されて強い痛みを生じます。レントゲン像で観られる骨溶解では、ガン細胞が骨組織を壊していくので、骨が急速に溶けて痛みが生じるものと考えていました。ところがその後、硬い骨と軟らかい腫瘍細胞との位置関係をうまく保ったまま、骨転移部を薄く切り出して顕微鏡で観察する方法が開発された結果、その考えを変えざるを得なくなりました。そこには、腫瘍細胞に呼び寄せられた暴れん坊の破骨細胞が、集団で勢いよく骨を削っている所見が確認されたからです。このことからガンの骨転移による骨折・骨破壊・骨の痛みなどには、破骨細胞の働きを抑える手法が有効という考え方がなされます。
このようにして、カルシトニンというホルモンには、骨が削られるのを抑えると同時に骨の痛みを除くといった働きも認められることから、ガンの骨転移による痛みにカルシトニンが有効性を発揮することもあります。破骨細胞は、二週間ぐらい活躍した後は働きを止めて、骨を造る細胞へと活躍が引き継がれますが、何故働きを止めるかについては種々な事実が分かっています。二週間も大車輪で働けば細胞の寿命が来て元気がなくなります。掘ったクボ地をいいかげんに埋めたらどうだとの指令が、骨芽細胞から骨増殖因子として来る、骨芽細胞への交替を促す物質(共役因子)が現れ、細胞ノリが古くなって骨に密着できずに剥がれて行くのが原因と考えられています。意外と大型暴れん坊細胞は短命なことが分かります。