老化を、超システムの現場に人って眺めて見ます。末梢の免疫臓器である脾臓の中にいるT細胞を採って分析します。T細胞は、抗原レセプター(TcR)で『非自己』を認識し、TcRに結合しているCD3分子を介して、認識によって生じたシグナルを核に伝え、インターロイキンの生産や細胞の増殖、ヘルプ、抑制、標的細胞傷害などを起こします。
その際、ヘルパーT細胞はCD4、キラー、サブレッサーT細胞はCD8分子を利用して、認識の効率を高めます。CD4+T細胞、CD8 +T細胞は、胸腺から一定の割合で供給されています。
老化動物の研究ではっきりしたことはCD4+ヘルパーT細胞はそれほど減少してないのに、CD8+キラー、サプレッサーT細胞が著明に減少していることです。マウスでは、18ヶ月歳ごろからCD8+T細胞の減少が目立ち始め、平均寿命を越えた2年以上の動物では著しく少なくなります。
人間でも同じことが見られました。CD8+T細胞には、ウイルス感染細胞や癌細胞などを殺すキラーT細胞が含まれています。ウイルス感染に対する抵抗性や、癌細胞の排除がうまく行かなくなるのはこのためと考えられます。このほかに、癌化した細胞を見つけて殺すとされているナチュラルキラー細胞(NK細胞)もまた、加歳の影響を敏感に受ける細胞で、40歳代を境にして急激に低下していきます。もっと重要なのは、CD8+細胞中に含まれているサプレッサーT細胞でしよう。この細胞は過剰の免疫応答を抑え、『自己』に対する無反応性を維持するために重要な意義を持っています。