私達の体は、たった1つの大きさ0.2ミリの受精卵細胞が、約10月10日間、分裂増殖を重ねて、200種類の細胞で、脳を始めとして、胃・腸・心臓・肺臓・肝臓・腎臓・脾臓・膵臓等の臓器器官と、血液・血管・筋肉・骨・神経系等の組織と、眼・耳・鼻口・舌・皮膚等の感覚器など、人間にとって必要なものが、必要なサイズで、必要な場所に、必要な数だけ、必要な時に、必要な期間で、分化形成され、誕生時に人体のミニチュア版として3兆個の細胞集合体と成り、引き続き分裂増殖を重ね、成人して60兆個の細胞集合体で出来ています。
このたった1つの細胞の、分化・形成・成長して行くプロセスは、長くて見事なストーリーを持ったドラマと言えます。そのドラマの中に、人間の生理・病理・薬理・健康の鍵が在ります。その鍵を取り出す道具が、医学を始め自然科学・人文科学等の学問です。いや学問だけではなく、昔からの言い伝え・慣習・諺等が、その道具となります。
そして、この200種類の細胞は、生体合目的性の恒常性ホメオスタシスの基で、脳を中心とした中枢神経系や、脳から出て行く遠心性神経・脳へ入って行く求心性神経等の末梢神経系等との、相関性・相反性・相誘性を持ったネットワークを形成しています。
それらの作用活動の主役として神経細胞が、各種の細胞や、人間の体の中で、何時も変わりなく、一定の働きをしている、免疫系・代謝系・分泌系・自律神経系・血液中のカルシウム濃度の一定保持・体内温度の一定保持など、いわゆるホメオスタシス維持に参加しているわけですが、これら200種類の細胞の働きを、助けたり妨げたりという体内の大量の各種ホルモンや各種常在細菌(善玉・悪玉)の、推進・抑制・協力・制御と言う前述の、相関性・相反性・相誘性が、各種の体内情況に対応するという極めて複雑な体内環境に対して、最近、仮説としてではあるが、トロフィック説と脳の可塑性について、「体が各種の神経を支配する」と言う視点が、奇想天外なのか?というのが今回の意見として述べたいところである。