二ヶ月前のあの猛暑とうって変わって遅い秋がおとずれた。朝晩はセーターを着込むほどの冷え込みにやっと体がついてきました。秋ともなれば、読書の 秋なぞと言うけれど今年はあの暑い夏の日々は何所にも出かける気力がなくて読書三昧の日々でした。涼しくなってもそのお楽しみが続いている。

先日90歳で週刊新潮に連載を執筆中であった山崎豊子さんが亡くなられたのを機に未読の作品を読むことにした。死ぬまで現役で長編に取り組まれた気概性に敬意を払わずにはいられない。追悼の意味をこめてしばらくは、山崎ワールドに浸ってみようと思っている。金木犀の香りただよう秋の夜長に読書にふけるお楽しみは、気の置けない友人とおしゃべりする事と同じぐらい幸せ。たまたま二、三日前に読み切った「運命の人」は、沖縄返還時の密約の存在をスクープした毎日新聞記者が、国家権力と戦う壮大なスケールの物語です。事実を取材し、小説的に構築したフィクションです。大変読み応えがありました。たまたま今日「秘密保護法案」が国会に提出されました。今後国民の知る権利を担保する取材報道の自由といかように折り合いをつけてゆけるのか心配でもあります。この法案の提出のきっかけになった事件が「運命の人」と確信できました。新聞の読み方、テレビの見方にあらためて気をつけようと思う。たまたま選んだ本なのに価値ある作品との出会いでありました。

この二ヶ月間に乱読した本を参考までに紹介します。

百田尚樹
海賊といわれた男
本屋大賞受賞、誇り高き日本男子のノンフィクション歴史小説

モンスター
モンスターとあだ名をつけられた女性の心の闇にせまる。屈折した報復の日々の中にあくなき美への執念

輝く夜
いつかきっと願いが叶う幸せの形

影法師
下級武士勘一は筆頭家老にまで上り詰めた。一方竹馬の友彦次郎の事が気にかかる、二人の男の生き様

妹尾河童
少年H
戦争を生き抜いた作者の自伝的小説

雫井脩介
火の粉
元裁判官の隣に、過去に無罪判決を下した男が越してきた驚愕の犯罪小説

高田郁
銀二貫
大阪商人の厳しい躾と情けで銀二貫はやっと大阪天満宮再建のために寄進されることになった。大阪商人のみごとなまでのお金に対する哲学を表現

大石圭
甘い鞭
サディスティックな欲望とマゾヒスティックな願望が交錯する美貌の女医とセリカは同じコインの表と裏、数奇な過去をひきずる破滅への道のり

曽野綾子
人間にとって成熟とは何か
人は年相応に変化してこそ美しい

姜尚中
母 オモニ
戦中戦後の混沌の中オモニは「在日」を生き抜いた「家族」を守るために

竹内一郎
やっぱり見た目が9割
人は相手を0・5秒で判断している

戸澤明子
50歳から輝くひと 30歳で老ける人
9割の女性が若返りの意味を誤解している

谷川彰英
大阪の謎
大阪がもっと好きになる知的ガイドブック

福島香織
中国の女
日本初の女性北京特派員がモンゴル人に扮しての潜入ルポ

和田秀樹
「依存症」社会
やめられないのは「意志」の問題ではなく「社会」の問題である。パチンコ アルコール ゲームの「依存症に依存する国」日本の実態を暴く

岡江昇
宅間守精神鑑定書
死刑判決を受けた宅間守の精神鑑定の事例。精神医療と刑事司法のはざ間で境界線を引くことの難しさ

桜木紫乃
ホテルローヤル
直木賞受賞作 湿原を背に建つ北国のラブホテルを舞台に「非日常」を求めて男と女は扉を開く

林原靖
破綻
岡山の誇る旦那企業である林原の破綻に至るまでのしくまれたストーリー、真の悪は誰だ

是枝裕和 佐野晶
そして父になる
縁をつくるのは血か、それとも共に過ごした時間か

山崎豊子
運命の人
国民の知る権利と国家権力の対決の社会派長編小説が投げかけた問題は大きい

女系家族
船場の老舗矢島家は代々の女系の家筋である。養子の父親亡き後の遺産相続争いを通して人間のエゴと欲望を赤裸々にえぐる長編小説

以上