検査を受ける前に知っておくこと

検査結果の解読とその利用法

自覚症状では遅すぎるから検査

正常値と異常値の解釈法

検査あれば憂いなしとは

 

定期健康診断の必要性

早期発見の必要な病気はいっぱいある。体がだるい!胃がもたれる!頭痛が抜けない!動悸がする!

このように体に何かの異常を感じた時は、病院で検査を受ける気になるが、体に自覚症状のない時は、つい病院へ行く気にはならない。しかし生活習慣病の中には、自覚症状が現れてからでは治りにくいものがたくさんあります。例えば、肝臓病です。肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、重篤な病気に侵されていても、自覚症状はほとんどありません。肝硬変で肝細胞の90%までがボロボロになっても、残りの10%の細胞が肝機能をカバーして、本人は気づかずにいることが多いのです。

糖尿病もそうです。糖尿病が激しい虚脱感と共に、のどがひどく渴き、やがて急激にやせてくるような症状があると思いがちですが、肥満や過食に関係が深い成人型(2型またはインスリン非依存型)糖尿病の場合、こうした自覚症状が出てくるのは末期のことです。初期には何ら自覚症状がないために暴飲暴食を続け、知らぬ間に膵臓のホルモン分泌細胞に器質的な(回復不能の)病変を引き起こしてしまうことが多い。

よく職場での突然死が話題になりますが、これも中高年以降は、自覚症状が出てからでは遅すぎることの証明です。突然死の8 0%以上は心筋梗塞や急性心不全などによる心臓死とされています。おそらく突然死で亡くなった人の多くは高血庄、動脈硬化、不整脈などの持病があったはずです。健康診断で持病が発見されたら精密検査を受け、発作を起こさないように生活指針を立てていれば、突然死を防げることが出来ます。

自覚症状が出てからでは遅すぎる病気で代表的なのはガンですが、ガンは決して不治の病ではありません。胃ガン、大腸ガン、子宮ガン、乳ガンなどは初期発見できれば9 0%以上は治ります。しかし胃ガンを例にとると、増殖したガン細胞が胃壁の筋肉層に入り込んでからでは治癒率(5年生存率)は30%前後に急落します。ガンは早期発見が何よりですが、初期ガンはほとんど自覚症状がありません。だから各種健診は、自覚症状の無い時に受けてこそ意味があります。

体の機能が急速に下り坂に入る中高年以降は、最低年1回は何らかの健診を受けて、健康状態をチェックするべきです。定期的な受診こそ病気の早期亮見に役立ちます。

忘れない.ために、誕生日にドック入りするのを決めて置くのも一つの方法です。

検査の正常値は人の数だけあることを忘れずに、人間ドックの検査結果は、具体的な数値や、陽性(+)または陰性(-)の判定、あるいは「異常なし」などと記入された検査表となって、貴方の手元に戻ります。この時に大事なのは、検査の正常値をあまり絶対視しすぎないことです。測定した時の心理状態、体調、朝と晩、季節などによって、検査値はかなり変動します。例えば「病院血圧」と言って、自宅で血圧を測ると正常なのに、病院で測ると精神的緊張から必ず血圧が高く出てしまう人もあります。だから1回の検査だけで正常、異常を決めつけることは出来ません。