ガンができた時に血液や尿中に増える「目印」。
体内のどこかにガンができると、健康な成人の血液や尿にはごく微量しか含まれていない特殊なタンパク質(例えば胎児の血液や羊水に高濃度で含まれる胎児性タンパク)などが異常に増えるケースが多くみられます。ほとんどのガンでも高率で血液中に増えるタンパク質もあれば、特定の臓器のガンだけで増える特異性を持ったタンパク質もあります。
これらを総称して腫瘍マーカーと呼んでいます。現在までに20種類以上の腫瘍マーカーが発見され、市販の測定キットで血液や尿を調べるだけで、済むため、ガンのスクリーニングなどに広く利用されています。また、外科手術などの治療後の経過を見る検査法としても有効です。治療前に陽性だったマーカーが、治療後に陰性になれば、回復は順調と考えられるわけです。
ただし腫瘍マーカーは偽陽性、つまりガン以外の病気や喫煙などでも陽性になることがあるので、検査で陽性と出ても100%ガンとは断定できません。このため通常は数種類のマーカーを併用し、結果を比較してガンの有無を推定します。例えば一つのマーカーが陽性でも、ほかの二つが陰性なら、ガンの疑いは薄くなります。
CEA(ガン胎児性抗原)は胎児の大腸の組織に存在するタンパク質ですが、大腸ガンの患者の約70%でこのCEAが血液中に現れ、ガンが進行するほど血中濃度が上昇します。大腸ガンだけに特異的に増えるマーカーではなく、肺ガン、食道ガン、胃ガン、肝ガン、腎ガン、膀胱ガン、甲状腺ガンなどでも上昇が見られるため、ガンのスクリーニング検査としてよく用いられます。高齢者やタバコを多く吸う人はガンでなくても高値になります。
IAP(免疫抑制酸性タンパク)は消化器系や泌尿器系のガンから急性骨髄性白血病まで様々なガンで高い陽性率を示すマーカーでCEAと併用してガンのスクリーニングが行われ、肺ガンや卵巣ガンでは他のマーカーより早く上昇し始めるので早期発見に有効です。