消化管で出血すると、その血液は便と混ざり、やがて肛門から出てきます。しかし消化管といってもロから肛門まで通じる長い道のりがありますから、どの部分で出血したかによって便に混じる血液の状態が違ってきます。
食道から胃、十二指腸、小腸、上行結腸までの間で出血すれば、流れ出した血液は消化酵素の影響を受けます。そこで本来赤いはずの血液は黒くなり、さらに腸内細菌などと混じり合って腐敗・発酵も進み、悪臭を放つようになるのです。
このような場所で大量の出血があった場合、排出される便はまるでコールタールのように真っ黒になります。これをタール便と呼び、このような症状を下血と言います。
タール便が出る病気に、食道静脈瘤があります。肝硬変などが原因で起こる病気で、胃の噴門部と食道の静脈が次第に膨らんで瘤のような状態になり、それが破裂することで大出血を起こすものです。かなり大量の血を口から吐きますが、一部は下血にもなります。
一刻も早く病院に運んで処置を受けなければなりません。
タール便が出るときは、胃ガン、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の疑いもあります。下血は症状がかなり進んだことを知らせるサインですから、すぐに消化器科で受診することです。
日本人には胃ガンが多いと言われていましたが、食生活の欧米化に伴って、このところ減少傾向にあります。しかし最近、胃にヘリコバクター・ピロリ菌という細菌が巣くっていると、胃ガンになる確率が高いということが分かって来ました。この菌は、胃酸という強力な酸の中でも生きて行くことができ、胃炎や胃潰瘍、胃ガンを引き起こす可能性が高いのです。もし胃潰瘍を繰り返すようであれば、この菌がいるかどうかの検査を受けることをお進めします。