遺伝物質、つまりDNAは生命活動を可能にしている色々な反応の組織者です。最終的にDNAはタンパク質の生産を指令します。タンパク質は非常に大きい分子で、「巨大分子」と呼ばれています。DNAと同じように、タンパク質もある種の素材が連続した配列で出来ています。この場合、タンパク質の素材となるのはアミノ酸という分子です。アミノ酸には20種類あり、核酸には4種類のヌクレオチドしかないのと対照的です。私達の身体にはおそらく50,000から100,000種類の夕ンパク質があると推定されていますが、まだほんの一部分が発見されたにすぎません。インスリン(ホルモン)、皮膚のケラチン、膝のコラーゲン、赤血球の中にだけ見つかるヘモグロビン、そして脂質の輪送と代謝に関与しているリポタンパク質粒子の一部である夕ンパク質、つまりアポリポタンパク質などがその例です。
タンパク質は生物に特有な生化学的反応(代謝)に積棰的に関与しています。細胞で合成されたタンパク質はその細胞内に止どまるか、または細胞外に分泌されて身体の色々な場所に連ばれ、そこで機能を発揮します。あるタンパク質は身体の色々な構造を作り上げるために働き、その他のタンパク質は多種多様な生化学反応を司る分子、つまり酵素として働いています。それだけではなく、多くのホルモンはタンパク質分子であり、また他の物質の受容体や運搬役として働くタンパク質もあります。受容体タンパク質とそのリガンドと呼ばれる分子が結合すると強力な信号が生まれ、その信号が引き金となって、身体の中で一連の反応が起こります。細胞中のDNAはそれ自体多くの異なったタイプのタンパク質に結合しています。私達が観察する染色体はDNAとタンパク質の混合物で出来上がっており、それで、デオキシリボ核タンパク質繊維と呼ばれます。
タンパク質の生産はDNAの制御下に置かれています。DNAはタンパク質の構造を指定する領域を含んでおり、これらの領域の特別の塩基配列が遺伝子を構成しています。一つの遺伝子は一つの特定のタンパク質を指定します。おそらく10万種の夕ンパク質があるだろうから、人間のゲノムには、10万種の遺伝子が分散して存在しています。