口、胃および腸と、消化管には多種の微生物が住んでいる。このうち胃は普通、酸性であるから、細菌の活動はほとんどない。小腸に入ってから活躍する。小腸内容物は、1分間に1~2cmの速度で移動する。一方細菌は最適の条件で20分間に1回分裂し、その数が2倍になる。細菌が増えるより、内容物の動いていくほうが速い。細菌が増える前に、腸内容物はどんどん動いていく。だから、腸粘膜表面は洗われて、細菌は、ほとんど付いていないのではないかと思われるかもしれない。ところが細菌は結構、強固に腸の表面に付着している。グラム陽性菌(グラム染色で紫色に染まる細菌)及び酵母菌は、ムチン(粘着性の強い多糖類)を介して付着している。ムチンはちょうど海草で作るノリのように粘りがあり、簡単には菌体を離さない。
大腸菌の付着は、大腸菌の菌体の回りに細かい毛(多糖類よりなるグリコカリックス)がたくさん生えている。腸粘膜の表面にも同様に、細かい毛(グリコカリックス)がたくさんあって、この両方の毛がレクチンというタンパク質を媒介にして結合している。